2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

【書籍時評】『ショットとは何か』

ショットとは何か (蓮實重彦 , 2022) 蓮實重彦の新著『ショットとは何か』を読みました。 蓮實重彦『ショットとは何か』 www.amazon.co.jp 雑誌「群像」2020年5月号より連載が始まり、この度それらをまとめて無事に書籍化。聞き手である三枝亮介が蓮實重彦…

【映画時評】『親愛なる同志たちへ』

Dear Comrades ! (Andrey Konchalovskiy , 2020) アンドレイ・コンチャロフスキー監督作品『親愛なる同志たちへ』を見ました。 www.youtube.com 映画『親愛なる同志たちへ』 アタマン宮殿が聳え、広場にはボリシェヴィキ党歌が旧ソ連の都市ノボチェルカッス…

【映画時評】『コレクティヴ 国家の嘘』

Colectiv (Alexander Nanau , 2019) 『コレクティヴ 国家の嘘』を見た。オバマ元大統領が選ぶ2020年ベスト映画にランクインしていたそうで、日本では昨年の10月に公開。ルーマニアの製薬会社 Hexi Pharmaによる消毒液希釈問題自体は2016年に発覚しており、も…

【旧作書評】『映画というテクノロジー経験』

映画というテクノロジー経験(長谷正人 , 2010) 『映画というテクノロジー経験』を読んだ。長谷先生と言えば、初期映画研究の大家・トムガニングやダイヴォーンらの論考の集成『アンチスペクタクル』を邦訳された先生で、特にこの書の「光あれ!」には大変…

【映画時評】『ムーンフォール』

Moonfall (Roland Emerich , 2022) ローランドエメリッヒ新作『ムーンフォール』見た。日本公開は未定だが、待ちきれない!と米国iTunesで。 www.youtube.com まず、Moonfall(月落下)というタイトルに嘘偽りのない映画だということは断言できよう。予告編…

【旧作書評】『ハリウッド映画史講義/翳りの歴史のために』

『ハリウッド映画史講義/翳りの歴史のために』 (蓮實重彦 , 1993) 蓮實重彦『ハリウッド映画史講義』を読む。「絢爛豪華なハリウッド」をノスタルジックに懐かしむのではなく、副題が示す通り、豪奢なハリウッドの翳りの時代にデビューし監督人生を通して…

【書籍時評】『縁食論』

縁食論 (藤原辰史 , 2020) 京都大学大学院総合人間学准教授・藤原辰史先生の最新のご著書『縁食論』を読んだ。 『縁食論』(ミシマ社) 『ナチスのキッチン』『カブラの冬』という魅力的な本の存在は以前から知っており、読みたいなと思っていたのだが、な…

【映画時評】『バーニングダウン/爆発都市』

Shockwave 2 (Herman Yau , 2020) 『バーニングダウン/爆発都市』を見ました。 www.youtube.com 日本公開は二年遅れですか。舞台設定は2019年の香港だそうなので(劇中でも言及される)、たった二年と言えども様々な事件が起こった濃い二年だったので、隔世…

【旧作映画評】『甘い抱擁』

The Killing of Sister George (Robert Aldrich , 1968) 久しぶりの更新(4日ぶり?)。新作映画・書籍縛りで評を書こうと思っていましたが、さすがに追いつかないので面白かった旧作もちょろちょろと、さくっとレビューしていきます。 ロバート・アルドルッ…

【映画時評】『クライムゲーム』

No sudden move (Steven Soderbergh , 2021) スティーブンソダーバーグ監督の新作映画。コロナ期間中にキャスト・スタッフみんなでホテル缶詰になりながら撮影をしたらしい。当初予定していたキャストが変更になることもしばしばあって製作は大変だったそう…

【連載】トニー・スコットvol.1/『ドミノ』死相が見える映画

Tony Scott vol.1 DOMINO (2005) シリーズ連載第一回目は作家トニースコットについて。ここで敢えて彼を「作家」と呼ぶのは巷間で言われる「職人監督」という悪しきイメージを払拭するためでもある。俗に言う企画成立屋では決してない。例えば映画『マイ・ボ…

【書籍時評】『楽園の真下』

楽園の真下(荻原浩 , 2022文庫本出版 , 2019単行本化) パニックホラーが似合う語り口は間違いなく映画だろうと、かつての私なら断言していただろうが、ジェームズ・ハーバートの著作(『鼠』)に触れてからというもの、その考えは揺らいでいた。そんな中恒…

【映画時評】『非意識』『非意識の果て』

『非意識』『非意識の果て』(木村卓司/2021) 神戸映画資料館にて木村卓司監督の最新作二本を鑑賞。客入りは10人程度で、監督曰く「結構多め」だそう。 木村監督の名を初めて目にしたのが、『シネマトグラフオブエンパイア』という映画。尚この作品自体は…

【書籍時評】『手招く美女』より「ベンリアン」

Benlian (Oliver Onions / 1911) 国書刊行会より出版されたOliver Onions著『The Beckoning Fair One』(手招く美女)を読了。東雅夫氏「とれたて!この三冊」でも紹介されているとおり、英国怪奇党にとってOnionsは特別な名前だそうだ。まとまった邦訳はこ…

【映画時評】『アネット』

Annette(Leos Carax,2022) 公開日に映画「アネット」。劇場は京都シネマ。普段に比べると平日にも関わらず中々の客入り。年配もしくは研究者らしき風体の方が多いイメージだが、珍しく20-30代のお客さんも。 冒頭はarteなどの製作会社・配給会社のロゴが提…