アクションデーその3、否ジョナサン・モストウの日

a1. 『U-571』(ジョナサン・モストウ

a2. 『F-16』(ジョナサン・モストウ

a3. 『オーヴァーロード』(ジュリアス・エイヴァリー)

b1. 『狂気の山脈にて』(H・P・ラヴクラフト南條竹則訳、2020)

 

 

 

たびたび言及されるのはポオだけに限らず、ニコライ・レーリヒという画家。このブログが非常に面白いので引用しておく。最近はヒマラヤに興味があるので、レーリヒについても色々調べていきたい。

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間違いなくこの絵画は念頭にあったでしょうな。「チベット

 

 

a1.

U・ボート、潜水艦ものとしては物足りない。艦内がかなり整理整頓されているし、もっとオイルで汚しておいて欲しかったところ。こんな荒唐無稽に思える作戦が実話に基づいているのには驚きました。作戦実行する過程はなかなか見れる。

 

a2.

サイコウ!空軍が舞台の「殺人者はライフルをもっている」。実際にはライフルもF-16も核も持っているのですが。一切の同情の余地のないテロリストの造形は非常にアクチュアルで、未だ毒のある映画。もし「トップガン」のマーヴェリックの幼児性が暴力性へと転化してしまったら、アイスマンがいなくて孤独だったら、とネガティブにネガティブに妄想していくことで生まれた作品であるのは間違いないと思う。結果だけを淡々と見せる編集の切れ味も鋭い。おそらく予算の都合上実現ができなかった、国道沿いを音速で低空飛行するF-16、というカットは見てみたかった。

 

a3.

おもしろかった。ナチスに占拠されたフランスの田舎の教会の、塔では妨害電波を発して連合軍空軍の侵入を防ぎ、地下では人体実験をやっている、という色々を一つの場所に集約するアイデアが良かった。見ていてダレるところもほとんどないし、腕あるなあエイヴァリーさん。中盤からはしっかり作戦遂行映画の旨味を出してくるあたりもさすがで、今作で見つけた最高の俳優・ジョンマガロが乗ってきだすらへんからは最高。「塔を落とせ!」は全映画で聞きたい。オープニングの熱気もすごく、夢を見ているみたいな、偽史を扱う映画を始めるにあたっては最良のバランスだと思う。あんな狂った降下隊もない気がするけど、ほんとはあんな感じやったんやろうか?

 

b1.

ランドルフ・カーター」は小品ながらも沼地と電気が出てくる、ラヴクラフトの中でもかなり映画的な面白さに溢れた一篇。「狂気の山脈にて」は圧巻ですよね。やはりラヴクラフトは言葉の向こう側に行こうとした人だと思います。麻薬におぼれた夢見人だけが想像しうる(『ネクロノミコン』の著者のこと)異形の何か、という表彰不可能性と対峙している面白さ、それからダンフォースは『ネクロノミコン』を読了しているが故に、氷地下で見た「粘液の悪魔」に狂わされ、ショゴスのように共鳴してしまう、とこの二点が独創的で面白い。ここにも再びコレスポンデンス=照応がみられる。照応するものは5角形や、テケリ・リ!もそうですね。照応はオカルトの本質であり、また恐怖の本質にかかわっていると思います。そして(生物学的に驚天動地!)放射相称動物が人類の起源である、裏を返せば人類の基となった生物がグロテスクに描写され、彼らが南極の山脈の地下奥深くに潜んでいるというビジョンがまあ、恐い。退化した人間、というモチーフも見られる。