コロナ病床日記④ ファスビンダーLOVE

a1. 『ベルリン・アレクサンダープラッツ』(ブルハン・クルバニ)

 

 

ひさしぶりの外出。外はきもちいいな~未だ嗅覚・味覚なし。耳も聞こえづらくなってきた。

 

 

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やはり原作、オリジナルとの差異ばかりに囚われながら見てしまい、その改悪が目に付く出来ではあった。フランツのキャラクター変更は著しく、移民としてドイツの地で生きていかねばならぬ者としての弱さは描かれるが、それが翻った虚栄までは踏み込まず。オリジナルでは、片腕を失ったフランツが無くした方の腕の袖をポケットに押し込んで「こうしてれば腕があるように見えるだろう。そうすればスられない」と一人で豪語する場面があり、むなしさがあって大変良いのだが、本作ではそれはラインホルトの台詞に置き換わり、含みのない陳腐な台詞になってしまっている。そのことからも、キャラクター同士の関係性の推移、といった面白さは期待できない一方、登場人物一人一人を抜き出して見てみると魅力的に仕上がっている。とくにラインホルト、ミーツェの「声」は印象的で、初登場から(ミーツェはヴォイスオーバーで)心掴まれた。ラインホルト役のアルブレヒト・シュッへはすばらしく、『さよならベルリン』を見なかったことを激しく後悔。また原作からの改変で唸ったのはエピローグで、まあ原作のプロローグをエピローグに持ってきているだけなのだが、驚くのはそこではない。印象深いベルリンの喧噪にのまれ、思わず両耳を塞いでしまう仕種を、片腕を失ってしまっているため不格好な形で耳を塞ぐ仕種に置き換えており、これがふしぎと希望を感じさせる塞ぎ方でとても良かった。うん、良いもの見れたな。

死ぬまでに見れるかどうかと訝っていたが(どうやら日本には劇場上映の配給権がないらしい)、無事に行けて良かった。知らなかったがトークも付いていて、色々と興味深いお話も聞けて満足。貴重な機会をありがとうございました渋谷先生。