バイロン・ケネディ オーストラリア1

a1. 『マッドマックス』(ミラー/ケネディ

 

 

 

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友人の死をキッカケに警官を退職し、実家に帰省する場面がもっとも迫力がある。田舎に帰ると白痴が住んでいるのも非常に田舎ホラー的味わい。異様な編集が印象的なのは『バイオレンス・イン・シネマ Part1』でも編集を担当しているケネディの影響か。正面衝突の際の目玉や飛び立つ鳥のカット。画面手前に錆びた標識を置くことで画面全体の味わいが増している。世界観づくりとしては、燃料が手に入りにくい時代であるため、マッチではなくライターを使った子分をトゥーカッターが叱る場面がある。また司法省とは思えないほど崩壊してしまった、ほとんど廃墟のようなビジュアル。これも崩れかけた門を手前に配置しているのが大きい。署長が家で丁寧に緑を育てていたのは緑すらも希少となりつつあるということなのか。友人、妻、子供の死に悩まされる場面ではそれまでの淡々とした演出を離れて唐突に悪夢的なビジョンが。ベンチでかぶり物をぐしゃっと潰す気味の悪いカットも印象に残る。映画において、鼻持ちならない輩はとにかく喧しい、というのは重要。ナイトライダーや次作のヒューマンガスどちらも演説で煽り、戦意を削いでくる。

拙さが荒々しさへ好転した事例として挙げられることが多いが、上のように細部を見ていくと(特に画作り、世界観設定が)たいへんよく考えられていることが分かる。それと荒さとが同居しているのだから凄まじい。