熊日記まとめ、再び映画漬けの日々へ…

a1. 『フッテージ』(スコット・デリクソン

a2. 『ブラックフォン』(スコット・デリクソン

 

 

5日間にわたる熊調査おわり。入学当初から目標にしていた実地調査をはじめて体験、予想外の収穫に驚いた。元々の目的であった史料調査は順調に進み、目星を付けていた史料も含め、かなりのものを手に入れることができた。まさか新聞調査までできるとは…(しかもこれが楽しくて、ハマりそう)。足を動かして史料を集めに行く楽しさ&大変さを知りました。これまで趣味程度に嗜んできた映画は、未ソフト化の映画はロシアで見ちゃうし、手に入らないかと思われた史料も大半は京大に蔵書があるし、なければネットで買えましたが、それが「研究」になるとここまで変わるかと。いやあ~楽しい。また地元の学芸員さんとの繋がりも生まれ、史料解読の手助けをしてくれることに。いやあ~嬉しい。死ぬほどゲットしたので、とりあえず8月まで読む史料には困らない。ただ不足している資料もまだまだあるので、こちらは今後の課題ですな。それ以上に収穫だったのはご高齢の方々への聞き取りが出来たこと!今回はつながりを持てればなあ、くらいの感覚で行ったにもかかわらず、貴重なお話を毎晩聞かせていただけた(ご飯、酒もご馳走になり)。一緒に調査へ行った滋賀大の学生の方々は、「就職は熊でしてもいいかも~」と仰っていたけど、私も完全に、熊への愛着が生まれてしまった。

 

 

a1.

思い返せばロケ地はほとんど家の中。(ほぼ)ワンシチュエーションで映画を成り立たせるのに必要な敷地面積の勉強になりました。怪奇現象が起こる時にはやたらと廊下が広く感じたのだけれど、もしかしたブラムハウス製作の他作品からのセットの流用だったりするのだろうか?映像=ブバーグ(だっけ?)を前に、あまりにもあっさりと人間が潰れていく。反撃しようなどとは考えもせず、増える喫煙と飲酒量。イーサン・ホークはストレスを溜め込むタイプが似合う俳優で、私にとっての彼のハイライトは、『魂のゆくえ』で有刺鉄線を身体に巻き付ける場面。奥さんの一言で連鎖が成立してしまったのだから、それをツめる場面くらいは用意しても良かったのではないかと感じる。ロマンポルノの濡れ場時間縛りと同じく、本作でも不必要なジャンプスケアが目立つが、結構恐いのもあったのであまり嫌いにはなれない(箱の中から夢遊病の息子が逆さに登場するところ、父に背中を向けて寝たふりをする娘が死んだ少女と交信する所)。いっそ「5分に一回ジャンプスケア」縛りを軸に宣伝していってもいいのではないだろうか。『ドクター・ストレンジ』の監督だから印象的なのか、時間感覚を自由に扱うのに長けた監督に思える。スーパー8でエディットすることに夢中になってしまい、気付いたら夜に、という場面は素直に面白い。ワンカットの中で夜から朝に移り変わるカットも面白かった。

a2.

デリクソン特有の、何かが起こる寸前でやんわりフェードアウトする編集は非常に好み。特にオープニングクレジットまでの盛り上がりは最高でした。ホラー映画における黒電話は主に怪奇的な色が強く、『シエラ・デ・コブレの幽霊』では、受け手がいるはずもない地下室でリンリンなる描写が恐い(地下室映画という点でもリンクする。監督ジョセフ・ステファノは『サイコ』の脚本家でもあり、こちらも地下室映画)。本作も主にそういった演出の歴史を踏襲しつつ、最後には受話器そのものを鈍器にしてしまう、という荒技に。主演のメイソン・テムズ君は目つきが印象的で、どこかイーサン・ホークと通ずる目をしているのが配役の妙。ここにも「連鎖」モチーフが見られる。デリクソンは面白い、キャッチーな映像を作るのに長けている監督で、随所にその片鱗が見受けられるのだが、『フッテージ』同様、何か内に制約をかけてしまっているように思える。夢捜査(ドリームウォーク?)の見せ方なんかも『絞殺魔』みたいで好みだし、選んでいるモチーフは素晴らしいから、もっと好きにやったらハねそうだ。ぜひ良いプロデューサー・脚本家に巡り会って欲しいな。