なんと牧歌的か

a1. 『ジュデックス』(ジョルジュ・フランジュ

a2. 『カモン、カモン』(マイク・ミルズ

a3. 『ニューオーダー』(ミシェル・フランコ

 

a1.

傑作。文句なし。

a2.

映画で見ていて、くどい、と思わされる描写の処理の仕方が鮮やか。たとえば近年ではメールだったりスマホで電話の描写だったりがどうもくどく見えるのだが(はじめてそのことを意識したのはセラ『ロストバケーション』だった)、文面や声が別の場面に重なるよう、巧みに編集がなされている。ちなみに黒沢清『旅の終わり、世界の始まり』では前田敦子がメールの文面を口に出す、というやり方で処理をしていた。数々の映像がゆるやかにつながっていく、それは見ていて心地良いし、何か分かった気にさせる力があるのだけど、面白いとは別。と、これまでこういった類いには否定的でしたが、今作に限っては悪くないかなと。ウディ・ノーマンが可愛いから。

a3.

もはや誰も得をしていない。おそらくは計画的ではない、暴徒の波が押し寄せる中、護衛が思わず客に向かって発砲してしまう場面の強度はすさまじい。イデオロギーではなく、今や社会を動かすのは突発的に湧き上がる「感情」なのである。また映画の冒頭が「暴動」と「病院」である点も見過ごせない。『食人大統領アミン』の系譜に連なる病院描写。金のない貧者は移管されるため、さらなる金が必要となる。元・従業員の男が金を無心しに来る場面は、異物が屋敷にやって来た感覚。偶然にも『ジュデックス』に類似の場面があるが、そちらでは男はあくまでも金は受け取らず、生き別れた息子を求めている。なんと牧歌的か。期せずして、対照的だ。彩度の高い画面が印象に強く残るが、特権的な色である緑は、決して豊かな色に映らない。補色であるマリアンが着ている赤い服も。ラスト、家政婦含む3名が絞首刑に処され、垂直に伸びる首吊り縄が三本、画面を丁度四等分するように映るのだが、なぜだかそれを見て国旗を連想してしまう。まさしく新秩序たる絶望的なラストカット。