ヘラルド(先触れ)

a1. 『トップガン:マーヴェリック』(ジョセフ・コシンスキー

a2. 『悪魔の往く街』(エドマンド・グールディング)

b1. 『シルバーサーファー:ブラック』(ドニー・ケイツ/トラッド・ムーア)

 

 

a1.

これは傑作でしょう。コシンスキーの映画だとこうなってしまうのだが、またしても、褒めようとしても言葉が出ない現象が。まず素晴らしいと思うのは、マーヴェリックの立ち位置でしょうか。前作『トップガン』では若かったこともあって無茶をする、扱いが厄介な青年というイメージしかなかった彼が教官を務めることで、鼻に付く感じが皆無。やっぱり組織ですから、その規律を乱して無茶をするマーヴェリックを手放しで賞賛することは出来ないわけです。しかし今作で無茶苦茶なことを言っているのは明らかに上官であるジョンハムでして、それに刃向かって自身の計画の正しさを証明するのは至極真っ当で応援したくなる。実際それでチームは再びまとまるわけです。トムクルーズが持つ危うい雰囲気とチームの規律を両立させる上で、前作は上手く出来ているとは思いませんが(あくまでもトムをヒーローとするならば。一番株を上げたのはアイスマンでしょう)、今作ではそれが見事マッチしている点がすごい。トムクルーズを活かすことがよく考えられた脚本だと思います。そういうキャラクターの配置とバランスが非常に上手くいっている。最後に見事「ならず者国家」部隊を撃墜し、空母に帰って来たマーヴェリックとハングマンを迎えるメンバー達。皆に囲まれる中、握手をするのはもちろんトムとマイルズテラーなのですが、その前にマイルズとハングマンも握手を交わす。ハングマンはよくいる「厄介者」といった類型的なキャラクターの印象で終わってしまいそうなものでしたが、そうはならない辺りがコシンスキーの腕だなあと。『オンリー・ザ・ブレイブ』における、一見類型的な登場人物達の魅力を引き出して「キャラクター」に仕立て上げる手腕を買われての今回の起用だと思いますが、ブラッカイマーはよく見ていますね、素晴らしい選球眼。思わず涙をこぼしてしまったのは、母船から発艦するトムが旗振り?に対してハンドサインで「GO」を送るのですが、そのサインへの旗振りのリアクションが映されない所。あそこは第四の壁を越える、と言えば大げさですが、観客への目配せというか、コールでしたね。そこで感極まって涙が。ああ、もう一回見たい。『オンリー~』に引き続き、ジェニファーコネリーも超良かった。あの人が出てると映画が締まるんだよなあ。それに撮影も素晴らしいです。クラウディオミランダはコシンスキー組の人ですが、人物の表情を中心に据え、しっかりと正面から撮る。傑作や~。

a2.

大好き!

b1.

よく分からないが凄いものを見たという気にはさせてくれる辺り、非常にマーベルコミックぽい。シルヴァーサーファーは僕もお気に入りのキャラクターの一人。Dr.マンハッタンの過去/現在/未来が同時に進行しているという設定を汲んだような、独特な円環構造を持っている所が面白い。宇宙における光と闇のバランスを保つためには、光担当のサーファーだけでは不釣り合いだ、という指摘は意外にもこれまで考えてこなかったため、とても魅力的なアイデアに思える。マーベル世界における傍観者(ウアトウとか)は、すぐに事件に介入してしまう所に可愛げがあって好きなのだが、本著におけるシルヴァーサーファーの傍観者としての在り方は見事なのではないでしょうか。