ソニックデー

a1. 『ソニック・ザ・ムービー』(ジェフ・ファウラー)

a2. 『ジェミニマン』(アン・リー

b1. 『雪男は向こうからやって来た』(角幡唯介

 

 

 

■つぎは佐藤究著(『テスカトリポカ』『QJKJQ』など)『爆発物処理班の遭遇したスピン』を読む。表題作、たいへん面白く読みました。ワードの強さでぐいぐい引っ張ってくる。

 

a1.

中盤のカーアクション、それからジム・キャリーの一人芝居が特に面白い。カーアクションも何が面白いって、必死で逃げるソニックたちとは対照的な遠隔操縦室のジム・キャリーの一人芝居が面白い。

 

a2.

おもしろい!いや~毎度エキスポに見に行くべきやったなと後悔している。スナイパー狙撃場面からはじまる映画にハズレはないのでは(例、『ウォー!!』)?中盤の山場、バイクアクションでは逆ウィリー?で顔を横殴りされるウィルスミスに、殴る方もウィルスミスという面白すぎるカットあり。そして圧倒的火薬量で推し進める後半の展開もよい。銃器ではとくにこのジュニアが持ってた「USW-A1」、パパスミスの「ガリルACE」がめちゃくちゃに良い!

↑バイク乗り回すジュニアのPOVショットの中のUSW-A1が特に光っていました。

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↑とくにこの場面はかっこよすぎてヒヤリとした…民間向け銃器の方が良いな。この映画には当然合っている。

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b1.

感想書くの疲れたので詳しくは述べませんが、たいへん面白いノンフィクションでした。雪男「現象」に注目したような内容で、とくに小野田少尉発見者の鈴木紀夫さんの辿った末路、それからエピローグにて死に至る最後の一日を再現するくだりは泣きました。あのパートはほんとうにすばらしかった。

 

見ていないホラー映画見ていくで~(day~)6

a1. 『プロフェシー』(マーク・ペリントン

 

 

■1

togetter.com

1982年に鹿島昇による『神皇記』の復刻が行われた際、名目上の版元である「日本国書刊行会」の会長に自民党所属の衆議院議員・中山正輝が就任した、という話を聞きハ?と驚いたが、「日本国書刊行会」と「国書刊行会」はどうやら別物のようだ(そりゃそうだよね)。此をキッカケに「国書刊行会」について色々調べていたらこれがヒット。この1つ目の話がおもしろいし、宇野宗佑てそんな人やったんや!くだらん女性スキャンダルごときで辞任とは残念。

■2

www.americangenrefilm.com

それからおもろい映画の探し方には毎度のこと悩まされますが、やはりAGFAアーカイブ、それからTrauma Trailerシリーズは非常に参考になりますね。探し方どうするかに時間をとられるのも尺なのでもうこの二通りに絞っていく。

■3

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先日ブログにも書いた映画の中の「リフレイン」について。重要作品を忘れていたので添付。ボブにのっとられたリーランドがマデリンを殺害する場面にて、厳密にはリフレインではないが、通奏低音として再生し終わったレコードから針がチクチクいう音が流れ続ける。ファーストショットでレコードを既に示していたのには驚いた。そうか、ダンスしたあとの場面だっけ?

↓先日のブログ

ken-ken-pa-pa-20220408.hatenablog.com

 

 

a1.

ジョン・A・キールモスマンの黙示』原作のオカルト映画。目撃者へのインタビューが基になっていることもありギアとポイントプレザントの住民とのやりとりがメインになるが、目撃者のリアリティが高く、こわい。クライマックスはシルバー橋の落下で、これだけ聞くとなんて地味な…と拍子抜けすると思うが侮る勿れ、ここが中々のクオリティ。本作でも、またもやだまし絵的なこわいカットあり。これは精神崩壊系映画のクリシェと言えるかもしれない。時には強烈な光を伴って現われるモスマン、証言者のディテールで恐ろしいと感じた、はじめは2つの赤い点が何かは分からなかったが、近づいてくる内にソレが人間のような形の生き物の目だと分かる、というディテールはぜひ映像化して欲しかったところ。にしても謎の多い映画…

見ていないホラー映画見ていくで~(day~)5 またしても目玉

a1. 『ルームメイト』(バルベ・シュローダー)

a2. 『恐怖ノ黒電話』(マシュー・パークヒル

b1. 『偽書が揺るがせた日本史』(原田実)

 

 

 

またまた面白そうな目玉映画を発見。『The Blood on Satan's Claw』という映画で邦題は『鮮血!!悪魔の爪』。どうやら『The Witchfinder General』・『ウィッカーマン』と並んでフォークホラー三羽烏の内の一つ。これは一体どういうシチュエーション?

The Witchfinder General』はレフンプロデュース、ジョン・ヒルコート監督で再映画化されるらしい。レフンは映画撮る才能はあまりない方だと思うけど、映画の好みは中々嫌いになれない。NWRでリマスターもしてるアンディ・ミリガンとか、『マニアック・コップ』とかね。『ウィッカーマン』も既にリメイクされているし、手垢が付いていないのは『The Blood on Satan's Claw』のみ。

双頭の殺人鬼。 | 江戸の杓子丸

あとこれもショッキングな肩に埋め込まれた目玉も発見、『双頭の殺人鬼』。

 

hobby-rooms.com

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↑すばらしいリスト。参考になります。

■次は角幡唯介『雪男は向こうからやって来た』を読む。

 

 

 

a1.

エロいし退屈。ジェニファー・ジェイソン・リーのふてぶてしい割にはくどくない芝居は毎度のことながら良い。他の俳優陣はみんな誰かに気を遣いながら演技してるのか?というくらい見る気を削いでくる芝居。些事でいうなら、途中TVで流れてるFront242のrhythm of timeが良かった。バルベシュローデルはもっと才能ある監督だとばかり。

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a2.

すばらしかった!映画のドライヴ感とは何たるかを捉え得た佳作。決め打ちで進まない夜も昼もない異様なテンポ、(プエルトリコで撮影された)荒んだ外観、夢でみるビジョンとはいえ廊下の突き当たりに黒電話だけが設えられている光景といい、異界への嗅覚もとても良い。黒電話を介して、時空のねじれが起こるというアイデアと、幼少期のトラウマの回帰というドラマとを組み合わせた見事な、セルジオ・カシーによる脚本にも唸る。『ロッジ 白い惨劇』も見てみよう。また、『ブラックフォン』とは違い電話越しの相手の見せ方を抑制することも効果的であった。「声」が狂気を伝えるのに最適であるのは例の失踪事件を見ても明らかである。そして『ナイトハウス』でも印象に残ったトリックアート的な恐怖ビジュアルが、こわい!私が気付いたのは2カットのみで、1つ目は木々かと見紛うほどの出で立ちの老婆を引きで捉えた、何ら思わせぶりではないインサートで、2つ目は屋内で陰の形が旦那を模したものになっているというもの、他にもあったのかもしれない。如何に幽霊を見せないか、に尽力していたJホラー胎動期の猛者たち、それを現代にそのままトレースしたところで効果は薄いが、視点を変えて「如何に幽霊を映しながら隠すか」という演出にはまだ可能性がある気がした。優れた映画は見ている途中、この作家は実は狂っているのでは、と思わせてくれる。

 

b1.

『和論語』の沢田源内、『椿井文書』の椿井政隆、『太田道灌自記』の田宮仲宣らに共通する偽書作成のモチベーションを「世間を瞞着すること」と解釈している。存在もしなかったはずの書が引用され、偽作によって生まれた新たな史実が人口に膾炙していく様子を眺めるのは快い遊びであろうと。そこに何か、偽作をせざるを得ない切実なる作者の内面の現実を読み取る、といった姿勢は見られない。しかしそれもアナール学派らや、原田実さん自身の研究の姿勢としては貫いておられることは述べられており(それだけではなく、受容の在り方や社会的影響などに焦点を絞って研究を進められているよう)、本書はあくまでも「偽書学入門」といった感あり。ききかじった程度の知識しかなかったため、とても面白く読む。現代篇では昭恵夫人×不二阿祖山太神宮

10月17日、18日 月刊ムーの編集長と行く富士高天原ツアーが開催されます

)、武田崇元の話、『第三の選択』『アイアンマウンテン報告』など知っているワードが出てきてようやく掴めてくる。しかし現代、というか近世以降/以前では偽書の成立するメカニズムが大きく異なるようで、たとえば江戸時代の営利権取得のための偽書作成(天皇制に基づく主張である)と、中世の異界との交感を主張する偽書作成とは大きく異なってくる。どうも中世の偽書作成の話は中々難しい。モチベーションを理解しづらい。とりあえず私が強く興味を抱いたのは酒井勝軍、それに対する狩野亨吉による『天津教批判』でした。ちなみに酒井勝軍はシベリア出兵の際にあの『シオン議定書』に触れているそうで、そこら辺も気になる。また『富士宮下文書』と記紀神話の見え方の転倒の話、や酒井勝軍の反ユダヤ感情が親ユダヤにコロッと変ってしまう契機には興味が湧いた。いろいろなトピックを紹介されているので、本書を起点に、これからはひとつひとつのトピックを丁寧に関連文献を読んでいこう。まずは「竹内文書」から。それから映画との関わりと言えば、「田中上奏文」をめぐる一連の映画たち(p.181に記載あり)も気になります。

・『「異端」の伝道者酒井勝軍』(久米晶文

・『謎の竹内文書:世界の中心は日本だった!』(佐治芳彦)→附図にあり

・『日本=ユダヤ陰謀の構図』(赤間剛)→東南アにあり

・『日本とユダヤ謎の三千年史』(高橋良典→東南アにあり

・『プラハの基地』(ウンベルト・エーコ)(『シオン』をめぐるフィクション)→附図にあり

酒井勝軍執筆の本たち

偽書

a1. 『マンディブル 2人の男と巨大なハエ』(カンタン・デピュー)

a2. 『若き詩人の心の傷跡』(ラドゥ・ジュデ)

 

 

 

デーブリンを読み終わり、ようやく次の本へ移行(といっても自分の家に帰ればあらたに『運命の旅』が待っているのだが…)。今は原田実による『偽書がゆるがせた日本史』を読んでいます。これはかなり面白い。例のロシアからオーストリアに持ち込まれた偽書シオン議定書』についても、補足として言及。今日・明日の内には読み終わりそうだ。

新作ではこちらが楽しみ。『Glorious』。本日より米国ではShudderにて限定配信。ポスター内に触手が映り込むだけで一気に興味を刺激される。Cosmic Horrorです。

Glorious movie review & film summary (2022) | Roger Ebert

粂田文先生の『ベルリンアレクサンダー広場』(ファスビンダー)評。「まるでベルリンを室内劇のように撮っている」と評している。こういう室内性ゆえの密閉感というか閉塞感というか、そこから愛憎劇にまで発展していってもおかしくない雰囲気。こういう感覚はたとえばジョセフ・ロージーにもある。彼は実際に室内劇なわけだけど。

 

 

a1.

おもしろかった!デカい蠅の運搬を任される話、にならなかったことにまずは見ていて驚く。無知な主人公が巻き込まれていくタイプのサスペンスは皆無で、すべての責任は彼らにあり。ちょっとした寄り道を、一瞬でも主軸かと思わせてくれる豊かな映画。

 

a2.

毎回ハードな映画ばかりを作ってくるラドゥ・ジュデ。歴史劇だった『アーフェリム!』、現代が舞台の『野蛮人として~』『アンラッキーセックス』どれも会話を重視しており、信じがたい発言が次々と登場すること、全くの無知と言ってよいルーマニアの歴史に根ざした固有名などが連発される。『闇の左手』でも読んでいる気持ち、ひとつのSFを見ているような。それらにくらべると大分とっつきやすい映画ではあった。本作は舞台が1937-1938年のルーマニア。つまり大戦直前の病院が舞台。『コレクティブ』で映されていた現代ルーマニアの病院の悲惨な現状とあまり変るわらない状況。主人公が思わず「精肉店」と皮肉を言うくらいには雑な仕事ぶり。一方、他の患者との触れあいは盛んで、夜間には恋バナや政治談義に花を咲かせるギプス病棟の患者達。1940年にシマ率いる鉄衛団が政権を奪取する2年前(投票率急上昇中)、主人公がユダヤ人ということもあって、イオネスクやシオランといったワードが頻発する。ギプスで自由に身動きがとれない状態だからこそ燃えるセックスは二度描かれ、どちらも非常に良かった。基本的には引いた画ばかりの中、こちらも二度『吸血鬼』的なカットがあり、死を強く連想させる。基本となる画にも、そこかしこに鏡を仕込んでいたり、主人公が動くタイミングでときどきパンしたりと、意外にも有機的な印象。

休憩

 

 

ベルリン・アレクサンダー広場』エピローグで「Radioactivity」が無限にリフレインするシークエンスがあった。ファスビンダーは同じことを『13回の新月のある年に』のエンディングでもやっていた。同じことは、ラングが『緋色の街/スカーレットストリート』でも。↓で指摘。

ken-ken-pa-pa-20220408.hatenablog.com

この演出は興味深いものがありますね。他にも何かあったような気がするのだが。

見逃した新作ホラー見ていくで~(day~)4 映画の中に登場するカメラ

a1. 『モンスター 変身する美女』(ムーアヘッド+ベンソン)

a2. 『シンクロニック』(ムーアヘッド+ベンソン)

b1. 『ベルリンアレクサンダー広場』(アルフレッド・デーブリン)

 

 

雨ヤバすぎ。あと雷恐すぎ。

さっき知って驚いたのが(かなり前から話題にはなっていたそうで…)フランソワ・オゾンが『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』をリメイクするとのこと。タイトルはPetra=ペトラからPeter=ピーターにすげ替えられており、『ペトラ』の撮影現場が舞台のようだ。つまり、このピーターという男はファスビンダー自身の投影となっているよう。全然知らなかった!オゾンといえば『焼け石に水』(ファスビンダーの戯曲の映画化、未見)があるが、いよいよファスビンダーフォロワー作品の決定版となりそうな予感。クレジットに、マルギット・カルステンセンの「アーカイブフッテージ」、かつヴィジュアルエフェクトとあるのが気になる。

映画の撮影現場におけるパワーバランスの問題はファスビンダーの場合とくにアクチュアルであるし、現代性のあるテーマ。いい題材の選び方ですね。なお、「In My Room」は流れるそう(うれピ!)。なお、日本公開は確定しているようです。

↑カメラが登場するカットって無条件に良い。とても暴力的で。カメラ=銃でっせ。

Janus Films — Homework

キアロスタミ『ホームワーク』より恐すぎるカット。子供も泣いてる。

the_films_in_my_life sur Twitter : "Homework (Abbas Kiarostami, 1989) # Homework #AbbasKiarostami #criterioncollection https://t.co/jzyXCYnTAD" /  Twitter

↑ギャスパーノエ『ルクス・エテルナ』より「ゴダールの時代は良かった」おじさん。こいつほんまにおもろかった。

高橋洋中田秀夫『女優霊』より「おい、何か回ってるぞ」という恐すぎる場面。貴重なフィルムも無駄づかい…少し趣向は違うがすばらしい場面だった。

↑今日見た『シンクロニック』にもカメラカット登場…しかし、暴力的ではなかった。やっぱり撮影現場じゃないとあかんか。全然無条件ではないな。

 

a1.

傑作です。『アルカディア』と並ぶくらい好きかもしれないな。低予算ながらスケールアップを図るインサート芸とスクリーンプロセスが映画の格を一段上げている。だらだらとしたイタリア傷心旅行の模様には締まりがなかったのだが、彼女の真の姿が露わになるカットの破壊力がすさまじく、このワンカットで映画全体が締まる。ラストを適当にまとめてしまうのはムーアヘッド+ベンソンの難点か(ただ彼女がポンペイ出身というアイデアや、カタコンベのことを私より古いものと表現したり、ディテールが面白い)。たいしたことのない場面、たとえばタバコを買いに行く場面やバーで愚痴る場面などで、些細な演出なのだが少し違和感を残す演出も良い。すばらしかった。

 

a2.

これははじめてイマイチな作品。撮影は相変わらずムーアヘッドが担当しているのは流石だが、プロデューサーの多さに愕然とした。これくらいが普通なんか?こりゃつまらなくなって当然。独特なインサート芸(今回はやたら宇宙推し)や編集のテンポ感、スクリーンプロセスもいつもながら良いのだが、構図そのままで背景だけがパッと移り変わる編集はくどく感じる。キャラクターの捉え方について、適当な設定の救急救命医は最高でした。待機中にゴルフしたり、搬送中に喧嘩をはじめたり。と、良い要素は数多くあるのだが、脚本がぬるい。

見逃した新作ホラー見ていくで~(day~)3

a1. 『キャビン・イン・ザ・ウッズ』(ベンソン+ムーアヘッド)

a2. 『アルカディア』(ベンソン+ムーアヘッド)

a3. ベルリン・アレクサンダー広場』第13話(R・W・ファスビンダー

a4. ベルリン・アレクサンダー広場』エピローグ(R・W・ファスビンダー

a5. ベルリン・アレクサンダー広場』総括

 

 

 

おい、あつすぎんだろ。PCR検査の結果が届き無事陰性と証明されたので、そろそろ街に繰り出そうと思っていたのに、なんやこの気温は。

 

江戸川乱歩『犯罪図鑑』より「耳・耳・耳・耳!」。禍々しい耳のコレクション。耳にも特長はありますよ!

命がけの夫婦喧嘩!1467年のドイツでの夫婦の裁判の様子。す、すごい、夫婦版の決闘裁判や。

これも恐いです、ブハラ(現ウズベキスタン)の死刑塔。

現在の写真?何か全然雰囲気違うな。もう残ってないのか?

東トルキスタンの歴史概況と中国の民族政策⑧ ―イスラームの国際 ...

こちらはメリエス『トルコの死刑執行人』(1903年)。めちゃおもろい。

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今度やる『FALL』はこのブハラの死刑塔が念頭にあるのだろうか?

映画『フォール/THE FALL(2022)』物語エンディングまでネタバレと感想「恐怖中毒者にはたまらない作品」 - alpaca76

 

 

 

 

a1.

はじめは不安に思ったが、意外にも見れる映画だった。ヤク中の友人から謎の発狂ビデオが届き、心配した主人公は彼を更生施設に入れようと奮発。まずは一週間のヤク抜きから始める、汚いトレーラーでの共同生活。その中でヤクつながりの面倒な人間関係や実はそこはインディアンの保留地であった、という展開もある。洞窟の中に秘密を探りに行く主人公が中でヤク中を発見してしまう場面や、インディアンがドラックディーラーを撃ち殺すカットなど、いちいち見せ方が良いので、意外にもダレない。中盤から変な方向に物語が横すべりしだし、さいごにはその変なものの片鱗をチラリと見せる構成も見事。まず、あんな急斜面かつクソ田舎かつヤクが蔓延る土地を映画で見たことがなく、田舎ホラーとしても見れる良いディテールの数々。『アルカディア』の前日譚だそうです。

 

a2.

ああ、さいこう!ノーマルなカルト宗教ものかと思わせて、内実はラヴクラフトの思想に則った幻想怪奇映画であった。こういう映画を求めていた。烏の異常行動、という都市伝説化している事象から観客をアルカディアへと誘い、ループ、という肝心なワードが登場するまでが異様に面白い。「カルトっぽい」を導入に怪奇な出来事を扱う。森の奥にひそむ何かに引っ張られる二人、ブイの下に眠るものを目覚めさせてしまう兄。ひたすら同じコースを徘徊しつづける狂人。そんな狂人の戯言通り、二人はすでにループに巻き込まれていた。冒頭はラヴクラフトの言葉から始まり、彼から多大な影響を受けつつ曲解をしたルイスやトールキンについての言及もある。叶うことならベンソン+ムーアヘッドの脚本・演出による『指輪物語』『ナルニア国物語』を見てみたい。未知なるもの、表象不可能なものといかに対峙するか、ホラー映画が勝負をかけるべきはその一点なのである。たいへんな怪異がサイドミラーに映り込む演出は優れていると感じたが、最後はやや説明的になってしまっている点だけはもったいない。あ、前作に引き続きですが、キャラクターがみな魅力的で飽きない。ピューマと遭遇するカットはなんとスクリーンプロセスを使用とのことで、驚く。合成の質感を大切にしている。替え歌にされる「House of the rising sun」はパブリックドメインらしく、これも予算を抑えるための方策。秀作。今後に激しく期待。

 

a3.

プムス強盗団の犯罪は、商品を盗む強盗から現金強奪にまで発展。これまではまだ可愛らしい犯罪だったが、いよいよ可愛らしさはなくなり、メックはバーナーで火傷を負う怪我をしてしまい強奪は失敗することに。ラインホルト主導の計画は無理があり、やはり彼に関わると全員が不幸になってしまうのである。「神様の力を持った刈手」とは旧約聖書エレミヤ書からの引用だが、みな結局はバビロン=ベルリンに囚われることとなる。その事実に気付き、ラインホルトへの不信感を強めたメックは警察にミーツェ殺害、そして死体遺棄を告白。箱詰めにされ埋められたミーツェが発見されるカットで、カメラの前をスパンコールが散る演出が、残酷さ、儚さを高めている。新聞記事によってそのことを知るフランツは、ラインホルトとの愛憎関係をはじめて吐露。いよいよ二人の物語に終止符が打たれるエピローグへ。

 

a4.

ニューシネマの急先鋒だったファスビンダーがキャリア円熟期にて手法を先祖返りさせたようなシリーズだったと思う。当然、対象としている時代がワイマル時代であることと切り離して考えることは出来ないが、屋外であろうが屋内のように撮ってしまう、どこか現世から隔離された暗室に俳優を詰め込み、スポットライトを当てて映画を撮っているような。とても限定的な空間であり、機材等の制約を課すからこそ、逆説的に創造力の華が開く、というか。暗室であるからこそ、壁にあいた小さな穴から漏れ入ってくる光を撮れる、(カメラオブスキュラの原理で)その光で自由に、何でも投影できるということ。それはエピローグにおいて(屠殺場もそうだけど)「穴」がキーになっていることとも通じている。

また、このエピローグがあるからこそ本シリーズが今なおアクチュアルたり得ている。やけくそのように乱発されるポップミュージックとクラシックの数々、だけではなく本シリーズの、というか原作の時間感覚がはじめて提示されるから。それは「すべては同時に起こっている」ということ。ミーツェを殴りつけるフランツと、未亡人から金をむしり取るフランツとは同時にバビロン=ベルリンに存在していたのである。そのような、ある意味、決定論的宇宙が、フランツと二人の天使との旅の中で明らかになる。

 

a5.

タイトルに「ベルリン」とあるように、つまりは大都市ベルリンと人間との関わりについてのドラマなのである。フランツがプムス強盗団の犯罪計画に巻き込まれてしまうのは、たまたまブルーノが殴られている所に居合わせたからだった。フランツがわけもなくベルリンアレクサンダー広場にくり出したが故に、ブルーノが暴行を受ける現場に出くわすし、ナチ党員と同席してしまうし、コミュニスト集会にて冷笑的な態度をとり続けるしかなくなるのである。それは、フランツの周りの特殊な人間関係によるだけではなく、そこには都市の磁場がある。そんな磁場をも含めて描出し得ている。
またエピローグでは、そんな大都市ベルリンをバビロンに見立て、荒んだ都市を二人の天使と徘徊するフランツの精神の旅が描かれる。そこではじめて本シリーズの決定論的宇宙が提示される。すべては同時に生起する。フランツが未亡人から金をむしりとる時、彼は同時にミーツェに泣きつかれている。テーゲルから出てベルリンの変化に戸惑うとき、ミーツェはすでに棺桶の中。このエピローグがあるがゆえ、本映画は未だにアクチュアルな作品たり得ている。傑作。